神戸ルーテル神学校は、1957年9月、ノルウェー・ルーテル伝道会によって創立されました。宗教改革の福音信仰に立ち、北欧ノルウェーの素朴で熱心な敬虔主義の流れを汲みながら、神学教育を進めてきました。1973年以釆、神学校は西日本福音ルーテル教会、近畿福音ルーテル教会、ノルウェー・ルーテル伝道会(NLM)、ノルウェー共同ミッション(NMS・LFCN)の4団体によって共同運営されています。
神学校は、「恵みのみ、信仰のみ、聖書のみ」のルーテル教会の神学の遺産を受けつぎ、宣教と教会形成に深く結びついた教育をしています。北欧の敬虔主義の伝統を継承した、生さた信仰の涵養が、デポーション、祈祷会、リトリートなどを通してなされています。さらに、日本の宣教状況の中で、文脈をよく判断し救いのメッセージをたしかに心に届けることができるように、基礎的な学びを重視し、可能なかぎりの高く深く広い学びを追い求めています。とくに「聖書のみ」の土台の上にたって、ヘブル語・ギリシャ語の学習を強調し、聖書釈義の演習に力を注いでいます。歴史神学(教会史、信条史など)、組織神学(教義学、倫理学、弁証学、宗教哲学など)の学びも、つねに現代の宣教と教会形成、この世界における実践を念頭にいとなまれています。説教学、礼拝学、牧会学、教会教育、教会音楽など多彩にわたる実践神学の重視も、神学校の基本線です。学生は、これらを通じて、得た知識、積んだ経験、学んだ方法を駆使して、主体的・創造的に働きを進めていける能力を身につけることができます。
神戸ルーテル神学校のカリキュラムおよびレベルは、アジア神学協議会(ATA)によって神学修士課程であると認定されています。ATAは、アジアの諸教会の指導者をアジアで育成することを旨として、1970年に、シンガポールで設立された組織です。現在アジアに920余校と言われる神学教育機関のうち、100校がATAから学位の認定を受けています。アジアの諸神学校がそれぞれの文化的・社会的状況の中で、よりよく神学教育を勧めるために相互に活発な協力をしています。創立後30年を経てその活動が拡大し、現在、より地域に密着した活動のために組織を地域化しています。日本ではアジア神学協議会・日本支部(ATA/J)が組織されています。ATAの神学修士課程認定校である本校で取得された神学修士号(M. Div.)で、アメリカなどの神学教育機関で大学院レベルの神学の学びが可能になります。またATA/J加盟の福音主義的神学校によって、Asia Graduate School of Theology/Japan(AGST/J)が開かれています。Asia Graduate School of Theology(AGST)というのは、ATA全体の活動の一つで、日本では神戸ルーテル神学校をはじめ6つの神学校が協力してAGST/Jを組織し、千葉、東京、神戸、大阪での研修センターを開いています。ここでさらに、神学専門修士課程(Th.M.)、牧会学博士課程(D.Min.)、神学博士課程(Th.D.)の学びができるようになっています。
神戸ルーテル神学校は、内外の諸神学校とさまざまな協力をしつつ、日本における神学教育の一つのセンターとして働きを進めています。ルーテル教会の信仰および神学の遺産を創造的に継承しつつ神学教育を行っていますが、学生の受け入れは超教派です。これまで、ルーテル教会からとはべつに、改革派、福音自由、アドベント、アライアンス、メノナイト、在日大韓教会、単立教会などから多くの学生が入学して学びました。
神戸ルーテル神学校は、新しい世紀のチャレンジに積極的に向かう神学校として、50年の歴史をふまえて、神学教育の豊かさと深さ、高さと広さを求めてその歩みを進めています。