わたしたちに賜わっている聖霊によって、神の愛がわたしたちの心に注がれているからである。 ローマ5・5
ここで、「神の愛」と言われていることに注意してください。神の愛によってのみ、わたしたちは神を愛するからです。この地上には、内面的にも外面的にも、見られたり、感じたりして、あなたがたが愛し、また、おそれ、あるいは、あなたがたが信頼のおけるものはなにもありません。そうではなく、愛はすべてのものよりもはるかに高いところ、すなわち、あらゆる感情と理解をこえた、見えない神のうちにおいてとらえられるものであり、そしてそれは直接心の奥底のやみにたずさえられます。それは、なにを愛していないかよく知っていますが、なにを愛しているかは知りません。また、知られ、感じられるすべてのものを忌みきらい、一方では、まだ知られないでいるものを慕いあこがれます。
しかも、わたしたちのうちにあるこの高い徳は、使徒バウロも言っているように、わたしたちから生まれるものでもありません。わたしたちは神に願ってこれを求めなければならないのです。さらに次の真理がつづきます。
（1）注がれている、すなわち、わたしたちのうちから生まれるものでも、 生じるものでもない。（2）聖霊による、すなわち、わたしたちが道徳的価値を得るような、徳や 習慣によって得られるものではない。（3）わたしたちの心に、すなわち、水面の泡のように、たんに心の表面で はなく、わたしたちの心の奥底の真髄にまで注がれる。（4）わたしたちに賜わっている、すなわち、わたしたちはそれに値するも のでなく、むしろ、その正反対であったということ。
そしてこの真実性は次のことによって確証されています。それはまことに「賜わった」のであり、値するものではないのです。こうして、キリストは弱い者のために死なれたので、決して強い者や、価値ある者たちのために死なれたのではなかったのです。
ローマ人への手紙講解
