あなたは神にうけいれられたものであるから、試錬がそれを証明しなければならない。 トビト11・15（経外典）
神ご自身がわたしたちの生涯を試錬のうちに招き、からだと財産と名誉を損し、不義に耐えねばならないようにさだめられたのですから、試錬に会っても喜んでこれを受け、賢明に対処しなければなりません。そして、「しかり、これが人生だ。では、どのようにすべきだろうか」と考えるのです。それは試錬であり、試錬としてとどまり、試錬以外のなにものでもありません。それゆえ、神よ、あなたがわたしを助け、わたしが動かされ、倒れることのないようにしてください。
だれも試錬から引き上げられることはありません。しかし、わたしたちは祈りのうちに神の助けを求め、導きを乞い、自分を守ることができます。さて、この長老たちの書を読むと、あるひとりの若者がこのような思想からのがれようとしておりました。ところが長老が言いました、「愛する若者よ、あなたは頭の上の空を鳥が飛ぶのを妨げることはできない。しかし、髪の毛に巣をつくることを防ぐことはできる」。（アウグステイヌスも言っているように）同様に、わたしたちも、試錬や、つまずきからのがれることはできませんが、祈りと神の助けによって、うち負かされることを防ぐことはできます。
なぜ神は罪の試錬に人を会わせられるのでしょうか。それは、神と自分自身をよりよく知らせるためです。自分自身を知るとは、自分が罪以外のなにものをもせず、悪のみをなすということを知るのです。神を知るとは、神の恵みはあらゆる被造物よりも強いということを知ることです。このようにして、人は自分を軽蔑し、神の恵みをたたえ、讃美することを学びます。
単純な信徒のための主の祈りの講解
