主はわが主に言われる、「わたしがあなたのもろもろの敵をあなたの足台とするまで、わたしの右に座せよ」と。 詩篇110・1
ここで預言者は、キリストの国を、終始戦いに従事する永遠の王国として描いております。「わたしがあなたのもろもろの敵をあなたの足台とするまで」と書かれているからです。だがそれはわたしたちに正しくないようにみえます。このような王は、もろもろの敵をもつはずはない。敵を剣のひと振りですぐ追い払うべきである、と。たしかに、時がくれば、主はそのようになさるのです。しかし、わたしたちがこの地上にあるかぎり、戦いは続きます。分派、人間の知恵、理性、わたしたち自身の肉、良心、死、悪魔は、不安とおそれを生じさせようと、たえずわたしたちにおそいかかります。それゆえ、だれでもキリスト者であろうと望むものはこの事実を知り、この王国の性質を知るように学ばなければなりません。
そこには当然不和が存在するのであって、それ以外ではありえません。それゆえ、こうしたことに不満をいだき、怒り、絶叫する人にわたしは言います、「それは当然のことです。あなたはキリストがだれであるかを知らないのですか。すなわち、世と、悪魔と、罪と、死と、あらゆるものがこのかたに向かって反抗したのです」。このかたはもろもろの敵を持たねばならず、また、その国はこの地上に安定した平和を知らないからです。やがて、きたるべき世に平和はあるでしょう。しかし、この地上のキリストの国は平和を知らないのです。
1531年の説教から
